2010-07-30

[書評] 競争と公平感


競争と公平感

中身をつまみ食い:
  • 市場主義と大企業主義が同一視されたことによって反市場主義が生まれた。自由な競争を促す“下克上”の市場主義と、既得権を保護する大企業主義は全く違う。
  • 男性は競争を好むが、女性はあまり好まない。また、男性は競争下で生産性が向上するが、女性はそれほど向上しない。
  • 政府が持っているデータをインターネットで公開すれば、そのデータを研究者が分析し、政策の効果を測ることができる。
  • 市場競争は何でも解決してくれる万能薬ではないが、自分たちを豊かにしてくれる。しかし、市場競争は“つらい”ものでもあるので、メリットを忘れると競争への反発が高まる。学校教育でしっかり競争のメリットとデメリットを教えることが大切だ。
  • 夏休みの宿題を最後の方にやった人は中毒になりやすく、抜け出せなくなる可能性が高い。
  • 国全体の人口が高齢化すると、政府は年金などの老後福祉への支出を増やし、教育への支出が減る。若年層に不利な政策を減らすためには、未成年の親に子どもの数だけ追加の投票権を与えるなどの施策が必要。
  • 祝日が増えたことによって平日の労働時間が増えた。
  • 生産性を上げなかったり他人に迷惑をかける長時間労働を規制する仕組みづくりが必要だ。
  • 「目立つ」税金と「目立たない」税金の両方に注意を払う必要がある。
  • 損をしないためには経済学の知識があったほうが良い。
いろいろなデータ、それに基づく研究結果、そして著者の見解が見事にぎゅっと詰まっていて、とても中身が濃い1冊。
統計データとそれに基づく研究結果の紹介が主なので、あまり“楽しい”本ではない。しかし、興味深いトピックをたくさん扱っていて、かつとてもわかりやすく書かれているので、“経済”や“競争”といったワードに反応した人は読んで損はしないだろう。

2010-07-28

自分の意見を親に“認めさせる”には


人は意外に合理的”の著者であり、Financial Timesのコラムニストであるティム・ハーフォードのコラムでおもしろいものがあったのでご紹介。
I'm 13 and smart, but my family ignores me (僕は13歳で賢いんですが、家族は僕を無視します)
Being the youngest gives me some leeway if I happen to be misinformed. But it also makes it hard to express my opinion on the topics being discussed. (もし僕が誤解されたら、1番若いということは僕に余裕をくれます。しかしそれは議論されている話題で僕の意見を表明することが難しくなるということでもあります。)
Financial Timesの愛読者でもあるこの13歳の少年は 、経済学者の父を含む家族での夕食時の議論で自分の意見に取り合ってもらえないらしい。
それに対するハーフォードの答えが以下。
Perhaps you should simply accept the situation – which could be worse – and soak up the insight. (多分あなたは単にその状況(それは最悪でしょうが)を受け入れ、見識を吸収すべきでしょう。)
この少年の父は経済学者だ。 父の意見を聞き、“経済学的な見方”を吸収するほうが良いだろう。
 You are 13, but he cannot quite clear his mind of your 12-year-old and even four-year-old predecessors. Still, you might point out to him that he is using an obsolete modelling technique. (あなたは13歳です、しかし彼はあなたが12歳のとき、4歳のときのことでさえ忘れられていません。まだ、あなたは彼に時代遅れのモデリングの手法を使っていると指摘するかも知れません。)
 要は、親にまだ小さい子供として見られているということだ。
Begin by asking your father if we will have a double-dip recession, and make a show of taking note of his answer for future reference. He may insist that you do the talking in future. (あなたのお父さんに二番底の不況がある場合を訊ね、今後の参考のために彼の答えをメモするところを見せることから始めましょう。彼は、あなたが将来的に話していると主張するかもしれません。)
“将来のことを考えている”というシグナルを送ることによって、親の“まだ小さい子ども”というイメージを払拭する。そうすれば自分の意見を“色眼鏡”に通されずに聞いてもらえるだろう。

2010-07-26

テスト勉強なんてめんどいもんをやったほうがいい理由


※今回のエントリは“なんでテスト勉強なんてしなくちゃいけないの?”を加筆再構成したものである、夏休みの宿題の“3分間スピーチ”の原稿から転載した。

誰だってテスト勉強はできればしたくないでしょう。例外もありますけどね(笑)
なんでこんなにめんどくさいテスト勉強なんてしなければいけないのでしょう?
だって、あんなにいろんなこと覚えたって、社会に出てから役立つようには思えないですよね?
それでも、あなたは勉強するべきです。
なぜなら、勉強しないことによってやりたいことができないことがあるからです。
あなたがやりたいと思えるようなおもしろい仕事ができる会社はそう多くありません。
そしてそういう会社には入りたいという人がたくさん集まってきます。
では、あなたはどうしたらそんな会社に入れるのでしょう?
そう、勉強をすればいいのです。
学校で一見無駄にも思える知識を覚えなくてはならないのは、数少ない人を会社が求めているから。こんなにたくさんのことを暗記し、何度も何度もテストという形で選びぬかれ、それでも残るような人は少ないからです。
数が多ければ価値は無い。欲しがる人の数よりも少ないものに価値はあるのです。
例えば、あなたは、入りたい会社に“自分には他人とは違う強みがある”ということをアピールしたいと思っています。そのためには、まず履歴書で差を付けなければいけません。そこで落とされては元も子もないですからね。
履歴書をチェックする人にとって、履歴書に「東大卒」と書かれているのと、名前も知らない高校を卒業したと書かれているのでは印象が全く違います。履歴書にそこしか違いがないのであれば、もちろん落とされるのは高卒の方です。
勉強以外にみんながほしがる才能を持っている人ならテスト勉強なんてしなくても良いでしょう。運動部のエースが推薦でスポーツの名門校に進学するのが良い例です。数学が苦手だって、プロ野球に入団できる実力があれば良いのです。
しかし、そんな才能がないのなら、勉強するのが自分がやりたいことをやる1番の近道です。
もちろん、「俺はいい仕事なんてしたいと思わないから勉強なんかしなくていいや」という人もいるでしょう。
しかし、あとで勉強していなかったからやりたいことができなかったらどうでしょう? 後悔するのではないでしょうか?
勉強をしていれば、勉強ができるヤツにしかできないことも、勉強ができるヤツもできないヤツも誰にでもできることも、両方できます。
勉強をすることは、山を登ることにも例えられます。
コツコツと上に登り、地上3000mまで行けば、下に行きたくなったときも簡単に下れるし、地上3500mを目指そうと思ったときに登らなければならないのは500mだけです。しかし、地上200mのところに留まったままだと、3000mまで行こうと思っても簡単には登れません。
自分がやりたいことをやりたいときにやるためには、高いところに登っておく必要があるのです。
つまり、勉強をしておくと、やりたいことをやるときに役に立ちます。
勉強をすると、選択肢が広がるのです。

追記: 大石哲之さん(@tyk2)に「攻略法が見えないうちは、まあとりあえず勉強しておけは正攻法なので正しいかと。ただショートカットがみつかったら、ショートカットでよろしくというのがいいのでは。」と指摘されましたが、本当にそうだと思います。

2010-07-24

人はほんとに合理的?


人は本当に合理的なのだろうか? それとも不合理的なのだろうか?
“合理的”の定義を以前書いたエントリ“経済学の専門用語”から引用する。
便益が費用を上回っていること。複数のものを選択しなければいけないとき、矛盾のない一貫した基準に従った選択をしていればそれは合理的な行動と呼ばれる。
人は慣れていることに関しては最も自分に得なものを選ぶ(=合理的)。
例えば、あなたが引越してきたとする。
学校や会社に行くための自宅のマンションから駅までどうやって行くのかわからない。そこでGoogle マップで調べてみると3つの道があることがわかった。
初めは、この3つの道をランダムに行ってみる。
1,2週間もすると、まっすぐ行く道が1番の近道であることに気づく。それに気づいた後は毎日その道だけを通ることになる。
人は慣れていないことに対しては往々にして“あまり得ではない”選択肢を選びがちだ。
しかし、人は慣れていることに対しては合理的な行動を取る。そして、人は1日の大半を慣れていることに費やしている。
だから、人はたいてい合理的だ。
このエントリを読んで、「変化の早い世の中だから人の不合理な行動は増える」と捉えるか「いろいろな情報を得やすくなって人が“慣れる”までの時間が縮まり、合理的な行動は増える」と捉えるかは人それぞれだろう。

2010-07-22

グラフで見る経済


※今回のエントリは、夏休みの宿題である“社会科新聞”の内容を転載したものである。

※クリックで拡大
上のグラフは17カ国の1人当たりGDP(年間所得)の1800年から2009年までの移り変わりのグラフです。
各国が豊かになっていく様子を時代の流れに沿って説明しましょう。

1800年代

1番最初に豊かになったのは、イギリスでした。
1760年頃、イギリスで蒸気機関が実用化され、急激な工業化が進みました。
アメリカでも1840年頃から工業化し、イギリスに匹敵する豊かさを実現しました。

1900-1950

1914年から4年間に及ぶ第1次世界大戦によってヨーロッパ各国とその植民地がのきなみ大きな被害を受け多額の出費に苦しむ中、戦争に参加しなかったアメリカは順調に成長を続け、イギリスを引き離しました。
アルゼンチンは目立たないながらもすごく成長しており、同時期の日本を上回っていました。
そのころ日本はというと、なかなかの成長をとげてはいたものの、欧米に比べると見劣りしていました。

1951-2009

第2次世界大戦後、日本の1人当たりGDPが1940年の水準に戻ったのは1950年代後半でした。
日本は1960年代から急激な成長をとげました。
北朝鮮は、1976年まで韓国よりも豊かでしたが、1988年のソウルオリンピックをきっかけに両国の差が開き始め、経済が衰えていく北朝鮮と裏腹に、韓国は大躍進しました。
1970年代、オイルショックにより石油の価格が高くなり、中東各国は莫大な富を得ました。グラフでも1980年のサウジアラビアの1人当たりGDPがアメリカを超えています。
シンガポールは1965年に独立した後、徹底した経済成長政策によって大きく成長しました。

編集後記

今回、17カ国のグラフを見てどう思いましたか?
世界の経済が成長するスピードは年々速くなっています。
しかし、ケニアのようにほとんど成長していない国もあります。
この違いはなんなのでしょうか?
みなさんも是非考えてみてください。

追記: @kazemachiromanさんの指摘を受けたのでソースを明示しておきます。
Gapminder

2010-07-20

価格はなぜ必要か



これは楽しみ<@GkEc: 水曜にブログでお答えしましょう。RT @dankogai: それでは価格はいつ何のために必要になるのか。宿題にしておこう。比較のためじゃないよ<@masahirok_jp4:44 PM Jul 17th via HootSuite
約束通りお答えしましょう。
価格が必要なのは、資源には限りがあるからだ。
もし、食料の値段が無料なら、スーパーはいつも人で溢れかえっていて、いつも棚には食べ物がないだろう。
例えばりんごが3つある。このりんごが無料であれば、すぐに誰かが取ってしまうだろう。もしかしたら、りんごをとったのは「りんごはあってもなくてもいいや」としか思っていない人かもしれない。“りんごの価値を高く評価している人”ではなく“りんごの価値を低く評価している人”がりんごを手にいれてしまうのはあまりにももったいないし、無駄も多い。
どうすれば“りんごを高く評価している人”が確実にりんごを手に入れられるようになるだろうか?
そう、オークションをするのだ。これは“欲しい度合いを価格を付けることによって比べるとも言い換えられる。
しかし、スーパーではオークションをしていない。値札が最初から付いている。なぜなら、スーパーに付いている値札は今まで繰り返されてきたオークションの結果だからだ。

このエントリと一緒に小飼弾(@dankogai)氏の
404 Blog Not Found: Math - 比較に数値は必要か?
もどうぞ。

※今回のエントリへの反論としては「手に入れるのに費やす時間で“欲しい度合い”を比べれば良い」というものがある。しかしこれは、機会費用の低い人が手に入れることになってしまうので“欲しい度合いを比べている”とは言いがたい。1時間に600円しか稼げない人と2000円稼げる人では1時間の価値が異なるからだ。

追記: 小飼氏のこのエントリへの回答はこちら。このエントリで省略した“暗黙の前提”が丁寧に書かれている。

2010-07-19

安いものより高いもの



そして、コンタクトレンズの原価率に話は及ぶ。ある程度のお値段しないと不安になるという…RT @_kotomo さいきん新車特有のにおいも『新車の匂い』というものをわざとつけていると知り、衝撃を受けました。RT 製薬会社は、「良薬感」を出すためにわざわざ薬を苦くしているそうです。5:54 PM Jul 14th via HootSuite
経済学の基礎的な考え方に、“消費者は同じものなら価格が低いものを選ぶ”というものがある。
それなのに、なぜ消費者は“安いコンタクトレンズ”を嫌がるのだろうか?
それは、消費者にはそのコンタクトレンズが信用に値するものかどうか判断できないからだ。
今までのコンタクトレンズの10分の1の値段で「今までと質は同じです」と言われても疑ってしまうだろう。そして、メーカーには製品の質が変わっていないことを消費者に証明する手段がない。
コンタクトレンズなどの医療機器は、質が悪いものを使ってしまった場合の損害が大きいので、消費者には信用できるかどうか判断できない“安物”を買うインセンティブが無い。

まとめ: 1度均衡状態になると、それをずらすのは難しい。

追記: ジェネリック医薬品もこれに当たる。同じ効果で安いのに消費者は選ばない。

2010-07-17

経済学の専門用語


最近Twitter上で議論すると、“用語の定義の違い”から議論が平行線をたどっているのだと思うときがある。
“定義の違いによるすれ違い”を解消するため、私がTwitterでよく使う用語を中心に、専門用語を定義した。
※教科書、Wikipedia、専門家の発言などを参照し、間違いのないように気をつけていますが、もし間違いがあればコメント欄に書き込むか@GkEc宛にツイートしてください。説明がわかりにくい場合も、できる限り対応するのでコメントください。

合理的
便益が費用を上回っていること。複数のものを選択しなければいけないとき、矛盾のない一貫した基準に従った選択をしていればそれは合理的な行動と呼ばれる。
インセンティブ
行動を変える誘因。行動を変えると利得を得るとき、人は行動を変える。
便益(ベネフィット)
“得”すること。“お金に限る”と強く定義付けられている場合もあるが、Twitterでの議論の際は“社会的な要因”や“道徳的な要因”も含む。
費用(コスト)
“損”すること。その財(自分の時間だったり物だったり)を売っても良いと思う最低限の価格。
機会費用
そのリソース(時間/人/金など、限りのあるもの)を他のものに使っていれば得られたであろうもの。上記の“費用”には機会費用も含むことが多い。
均衡
誰もが行動を変えても“得しない”状態。
効率性
現在得られる最大の総生産が得られている状態。これ以上良くはならない状態。
パレート効率性
誰にも損ををさせずに誰かの状態を良くすることができない状態。
生産性
一定の資源(時間/金/人 etc.)からどれだけ多くの付加価値を生み出せるかの指標。
シグナリング
手間暇(=コスト)をかけることによってさりげなくメッセージを伝えること。自分が知っていて相手が知らない状態(情報の非対称性)を解決して便益を得るために行う。
外部性
取引の当事者以外に便益や費用を発生させてしまうこと。
限界~
追加的なもの。
サンクコスト
現在・未来の意思決定に影響を及ぼさない過去の費用。例えば、ウイルスバスターを3年分契約しても、その期間内に無料のもっと良いウイルス対策ソフトを見つけたとしたら、それに乗り換える方が便益は大きくなる。ウイルスバスターに払ったお金はもう戻ってこないのだから、意思決定に組み込むべきではない。

2010-07-15

[書評] 新書がベスト


新書がベスト

内容:
  • 新書は中身だけで勝負するのでハードカバーより“ハズレ”が少ない。
  • 新書は安いのでもし“ダメ本”を買ってもそこまで大きなダメージにはならない。
  • 1冊のハードカバーの本をじっくり読むより、同じ時間で10冊の新書を斜め読みする方が収穫が多い。
  • まずは新書を300冊読め。
  • 初めは中身を見ずに100冊買え。
  • ハードカバーはもし内容が良ければ文庫化されるし、もしされなくても同じ内容の新書がたいてい存在しているので買わなくて良い。どうしても欲しいときは1度読んだら捨てろ。
  • 内容を覚える必要はない。脳に印象さえ残っていれば、参照したいときに読み返せば良いだけ。そのため、手元に置いておくために図書館で借りずに本屋で買え。
  • 子どもに読書の習慣を根付かせたかったら、まずは親から読書の習慣を付けろ。
他にも読書の“常識”をぶち破ってくれる愉快な1冊。
しかし、指摘したいこともある。
「この本はすごい!」という評価を得た本は必ず文庫化されますし、あるいは新書で出版されます。
現在の日本における出版事情では、ハードカバーでしか手に入れられないスゴ本は、ごく少数だと言っていいでしょう。
これは“訳書”には当てはまらないことが多い。
訳書を最初から新書で出すという例はなかなか無いし、ミリオンセラーになった“ヤバい経済学”ですら、出版されて5年経っても文庫化されない。本ブログで紹介した訳書も同様だ。
本書で紹介されている“ハヤカワ新書juice”では新書で訳書を出版しているが、それでも点数が少なすぎる。
本書がいわゆる“専門書”を想定していないことはわかるのだが、もう少し細かいところまで気を配って欲しかった、とは思う。

そんなこんな言っても、“日本語の本”の読書法としてはとても“使える”本なので、新書初心者から上級者までおすすめできる本だ。

2010-07-13

投票の合理性


投票の合理性 - Togetter

投票へ行くのは“合理的”なのだろうか?
ある意味では合理的だし、ある意味では不合理である。

.@ikedanob それは何を“不合理”と呼ぶか次第ですが(これが僕と @GkEc さんの議論の中心でした)以下の意味で同意します。自分の1票が選挙結果に与える直接的な影響のみを「便益」と考えると、多くの投票行動を“合理的に”説明することは難しい。これはコンセンサスでしょうね。4:36 PM Jul 11th via HootSuite
“得”を“自分の1票が政治に影響を及ぼして自分が利益を得ること”に限定すると、1票の価値はほとんど無く、投票行動は“不合理な”(割りに合わない)行動となる。
しかし、僕は投票に行く人を不合理だとは思っていない。
投票に行くのは“社会的インセンティブ”が働いた上での行動であり、合理的だ。
つまり、投票に行って“得”なのは、“政治に影響を及ぼせた”といった自己満足が得られたり、“ご近所さんや会社の同僚に良く見られる”という意味で“得”なのだ。

2010-07-11

効率性と公平性



効率性と公平をトレードオフだという前提での効率性批判は、効率性という概念と、実際にそれを用いた分析手法についての誤解があるような気がすることがある。逆もまた然りで法の適用とその帰結は効率性の観点からみても説明がつくものも多い。仮想敵国批判を煽る一部の人の影響もあるけど、残念。7:36 PM Jul 1st via web
そもそも“効率的”とはなんだろう?
効率的な状態とは、“ある個人や集団の総余剰が最大の状態”を指す。
つまり、“現在実現できる最大の豊かさ”を達成した状態を“効率的な状態”と呼び、その度合を“効率性”と呼ぶのだ。
これと混同されやすい概念に“パレート効率性”がある。
“誰の状態も悪くせずに誰かの状態を良くすることができない状況”を“パレート最適”または“パレート効率的”と呼び、その度合をパレート効率性と呼ぶ。
ビルゲイツから富を徴収せずに貧しい人にお金を分け与えることができないとき、それは“パレート最適”と呼ばれる。

効率性と公平性は両立できないものなのだろうか?
この2つを「両立できない」と言っている人は、往々にして“効率的=パレート最適”だと勘違いしていることが多い。
酷いところだと、「金持ちから金をとったら効率性を損なうことになるから貧乏人を餓死させておくのが経済学の考え方」と勘違いしている人までいる。
国の政策で、富んでいる人から貧しい人たちへ再分配政策を行うのは、それが公平性のみならず効率性も改善するからだ。
貧しい人が教育を受けられるようになれば、本人の生産性も上がり、効率性も改善される。

まとめ: 効率性と公平性がトレードオフの関係になることはそう多くない

2010-07-09

私が経済学に興味を持った理由


※今回のブログエントリは、今年の2月に書いたTumblog(本ブログ開設前にTumblrに書いていたブログ)のエントリを一部書き改めたものです。

時々、「なんで経済学に興味あるの?」と聞かれる。
今回はその起源を小1のときから順を追って説明したい。
自分がいわゆる「もの知り」になり始めたのは小1のときに、伯父から伯父が子供のころ読んでいた「ひみつシリーズ」という本を何冊かプレゼント(お下がり)されたのがきっかけだった。このシリーズは、宇宙や地球などの「ひみつ」をマンガでわかりやすく解説してくれるというもので、とても夢中になって読んだ記憶がある。親にも新しいものをたくさん買ってもらった。それからいろいろな本を読んだが、「ひみつシリーズ」は小6になるまで読んでいた。
小2: よく「ズッコケ3人組」シリーズを読んでいた。このころは恐竜にも興味があった。
小3: それだけでは飽き足らなくなり、マンガの伝記を読み始めた。時々活字のものも読んでいたがすぐに挫折した気がする。小3の後半になると、「人権・憲法を大事にしよう!」という内容の本を読んでいた。ここに「国のせいで苦しめられている人がいるのに国は責任を認めようとしないんですよ! これを認めさせられるのは裁判官だけなんです! なのにそういう判決を出した裁判官はほとんどいないんです!」というようなことが書いてあり、これがきっかけで裁判官になりたいと思った記憶がある。また、「ブラック・ジャック」や「鉄腕アトム」「Dr. コトー診療所」なども熱心に読んでいた。そのため、医者や科学者にもなりたいと思っていた。
小4: 子どもの権利や行政機関、社会福祉などを子供向けに解説した本を読んでいた。結構反社会的な本を読んでいた気がする。(「日本の教育の欺瞞」みたいな)
小5: 地理に興味を持ち始め、国の位置と名前や首都名なんかを覚えていた。時々図書館から「世界の国一覧表」を借りてきては眺めていた。行政区分が大好きだった。
小6: 自己啓発書と英語の学習書をたくさん読んでいた。英語の学習書も結構読んでたけどそんなに上達した気はしない。
中1: 小6の2月に「新刊ラジオ」というPodcastで「予想通りに不合理」と「人は意外に合理的」という本の存在を知り、読みたいと思っていたものの、大阪に引っ越す予定があったため断念。5月になりその本のことを思い出したので近くの図書館で借りてきた。(「予想通りに不合理」は予約が埋まっていてすぐには借りれなかったが「人は意外に合理的」のほうはすぐに借りれた。)
読んでみると、それが予想以上に面白かった。今まで「何でだろう?」と思っていた疑問が「経済学」というツールで解明できることを知ってとても感動した。
それからしばらくはその知識で満足していたのだが、しばらくしてもう1つの転機が訪れる。
それが「Twitter」だった。
初めは友人とチャットをするような使い方だったのだが、いくつかフォローされフォロー返しをすると経済学専攻の大学生が多数いることを知った。今まで使う機会のなかった「経済学の知識」を披露できたので、その人たちと議論するのは楽しく、同時に自分がまだまだ勉強不足であることがわかった。今は経済学の教科書を読んで基本から勉強中だ。 他にもたくさんの刺激をもらい、いろいろやりたい意欲が湧いてきた。
最初に伯父に「ひみつシリーズ」をもらい、「人は意外に合理的」を読み、「Twitter」に出会ったからこそ今の自分がある、と思う。もちろん、他にもいろいろあったし、この3つを手渡されただけだったら意味がなかったと思う。それぞれの適切なタイミングで適切なものに出会えて本当に幸運だと思っている。

2010-07-07

子どもに規則正しい生活を身につけさせるには


ある親は子どもに夜9時までに寝てほしいと思っている。しかし、子どもは10時までテレビを見て、それから風呂に入って寝たい。
どうしたら親も子どもも納得出来る解決策が作れるだろうか。
親は子どもの夜更かしが恒常化してほしくないだけだし、子どもだってたまにテレビやゲームを夜遅くまでしたくなるだけだ。
この親と子のすれ違う「需要」をマッチングしてみよう。
例えば1ヶ月に10時間の「超過時間」を割り当て、9時までに寝なかった場合はどんどん削られていく。そのかわり、親は割り当てを超えて夜更かしをしない限りは何も言わない。10時間を一気に使ってしまうのではないかという心配は、11時以降には超過権が無効になるなどの規則を作れば解決する。
子どもには見たい番組を厳選したり何も無いときは9時ぴったりに寝るようするなど、自分で自分が最も居心地が良くなるように工夫の余地ができるし、親も夜更かしが恒常化する心配をしなくて済むので子どもを寝かしつける必要もなくなる。
学年が上がるごとに「超過権」を増やしていくなどの施策を取れば子どもの反発も招かずに済む。

まとめ: 子どもには自分で工夫するインセンティブを与えよう

2010-07-05

シグナリングの重要性[実践編]


シグナリングシリーズ:
なんでテスト勉強なんてしなくちゃいけないの?
シグナリングの重要性[基本編]
シグナリングの重要性[実践編]

今回は、いよいよ「シグナリングをどう使えば良いのか」ということについて書こう。

シグナリングの活用法は様々だが、今回は特に役に立つと思われる、「相手の嘘を見抜く方法」をお教えしよう。
その方法とは、その人自身ではなく周囲についてその人が思っていることを語ってもらうというものだ。
例えば、ある人の今まで付き合った人数を知りたいとする。そこで、あなたが相手の付き合った人数を訊ね、相手が「5人」と答えても、それを鵜呑みにしてはいけない。相手は「自分は謙虚な人間だ」とあなたにシグナルしているかもしれないからだ。
あなたが訊くべきなのは「普通は何人くらい付き合っているものなのか」だ。“普通”の人数を訊かれているのだから、相手には謙虚さをシグナルするインセンティブが無く、自分の本音を言う可能性が高い。そう、そこで相手が「普通は15人くらいじゃない?」と言った場合、相手の付き合った人数は5人では無く15人である可能性が高い。
この方法は、人は自己顕示欲を抑えることはできないという仮定に基づく。経済学は人の心をすら扱ってしまうのだ。

※このエントリは、タイラー・コーエン著「インセンティブ」を参考にした。書評もしているのでこちらもどうぞ。

2010-07-03

シグナリングの重要性[基本編]


シグナリングシリーズ:
なんでテスト勉強なんてしなくちゃいけないの?
シグナリングの重要性[基本編]
シグナリングの重要性[実践編]

まず、シグナリングとは「あるメッセージを伝えるために手間暇(=コスト)をかける」ことを指す。例えば、結婚記念日に夫が妻に花束を送るのは、妻が“花束そのもの”を欲しがっているからでは決して無く、妻に「君のことを愛している」ということを伝えるためだ。
シグナリングが必要なのは、情報が非対称だからだ。
例えばあなたが大学生だとする。自分の能力を自分は把握出来ているが、企業はそれを見極める術が無い。そのため、あなたは企業に「自分は優秀である」というシグナルを発するために「偏差値の高い」大学に入るために努力することになる。
1つ誤解しないでほしいのは、「中身が伴っていなければ、シグナルすべきものが無いためシグナルできない」ということだ。自分の優秀さをシグナルしようにも、そもそも自分が優秀でなければ有名大学には入れない。「中身があればきっと認めてもらえる」わけでもなく、まして「中身がなくてもシグナルでごまかせる」わけでは決して無い。

まとめ: 伝えるべきメッセージとシグナルの両方が必要だ。

2010-07-01

なんでテスト勉強なんてしなくちゃいけないの?


シグナリングシリーズ:
なんでテスト勉強なんてしなくちゃいけないの?
シグナリングの重要性[基本編]
シグナリングの重要性[実践編]

誰だってテスト勉強はできればしたくないものだ(一部例外はあるが)。
なぜテスト勉強なんてしなければいけないのだろう?
それは、忍耐強さを示すシグナルになるからだ。
学校で一見無駄にも思える知識を覚えなくてはならないのは、「希少な」人間を企業が求めているからに他ならない。こんなにたくさんのことを暗記し、何度も何度もテストという形で選抜され、それでも残るような人間は数少ないからだ。
数が多ければ価値は無い。欲しがる人の数よりも少ないものに価値はある。
勉強以外に「希少価値」を持っている人ならばテスト勉強などしなくても良いだろうが(運動部で活躍している人が推薦でスポーツの名門校に進学するのが良い例)、そうで無いのなら勉強に精を出すべきだ。

まとめ: テスト勉強をするのは自分を差別化するため