2010-09-27

[書評] 銃・病原菌・鉄


銃・病原菌・鉄〈上巻〉
銃・病原菌・鉄〈下巻〉

最近何かと話題になる感のある本書。本書は、著者が1973年頃に滞在していたニューギニアでフィールドワークを手伝っていたヤリという1人の青年の素朴な問いに答える本となっている。その問いとは、「なぜニューギニアには素晴らしい技術がなく、植民してきたヨーロッパにはあるのか?」というものだ。
著者は、この問いについて明確な答えはまだ出ていないとしながらも、いろいろな側面からこの問いについて考察している。
なぜヨーロッパ人がアフリカや南北アメリカを征服し、その逆にはならなかったのだろうか?

著者によると、それは「偶然」の賜物だという。
1万3000年前、どの大陸の人類も同じような狩猟採集生活を営んでいた。しかし、「偶然」ユーラシア大陸には他の大陸に比べて家畜化可能な動物や生産性の高い作物が多く自生していた。そのため、「偶然」ユーラシア大陸で1番早く農耕が始まった。農耕の開始により食料生産に従事しない人を養う余裕ができ、中央集権のしくみや文字など狩猟採集民族には成しえないものが生まれた。数千年に南北アメリカ大陸でも農耕が始まった。
「偶然」ユーラシア大陸は東西に長かったので、食料生産の技術や作物が伝わるスピードが速かった。気候によって技術をあまり変える必要がなかったからだ。対して南北アメリカやアフリカは南北に長かった。そのため、気候による差が激しく、肥沃地帯と肥沃地帯の間に砂漠があったりして、なかなか食料生産が伝わらなかった。
それは発明の広がりにも影響を及ぼした。ユーラシア大陸では文化が隣接していたので中国の発明がヨーロッパに伝わるのも容易だった。文化圏どうしが競争しあっていたので、新しい発明を取り入れない文化圏は取り入れた文化圏に征服されるか、その圧力に対抗するために発明を取り入れた。対して南北アメリカやアフリカには交流のない文化圏が陸の孤島のように点在していたので発明が伝わらず、周囲からの圧力もないので放棄される発明も多々あった。
そのような偶然が折り重なって、1533年にスペインの征服者ピサロはわずか168名の兵士を引き連れて数万の兵士に守られたインカ帝国の皇帝アタワルパを捕らえ、処刑することができた。タイトルの「銃・病原菌・鉄」は、スペインがインカ帝国を征服できた直接の要因を表している。病原菌でインカ人の人口を激減させ、銃と鉄剣によって石の棍棒で戦うインカ帝国の兵士を打ち破ったのだ。
つまり、1万3000年前の大陸ごとの「偶然の」環境の違いが全ての原因なのだという。

本書はとにかく長い。上下合わせて600ページ、そして1ページに文字が詰まっている。
長いと思う人は6章から9章までは読み飛ばしてもいいかもしれない。
個人的には、エピローグの中国とヨーロッパの違いに関しての話が非常に興味深かった。
なぜヨーロッパが南北アメリカやアフリカを征服し、中国はそうしなかったのか。中国は早くに統一されてしまったために、上層部の1つの判断で中国全土の進歩が止まってしまうことが多々あった。対してヨーロッパは今日に至るまで統一されたことが1度も無いので、1人の国王が進歩を止めてしまっても、必ず進歩を進めようとする国王がいた。そのため結果的にはヨーロッパは中国を追い越したという。
自分のあまり知らない分野であるためあまりツッコミやコメントはできないが、素晴らしい1冊だ。

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