2010-10-07

[翻訳] 成長のモデル


成長のモデル by Tim Harford - 道草より転載。

世界はPlay-Doh*1のようなものなのだろうか? それともレゴのようなものなのだろうか? こんなことを経済学者に訊ねるのはおかしいかもしれないが、最近、オックスフォード大学、LSE*2 、英国国際開発省の間で設立された新しいジョイントベンチャーによってLSEで開催された「Growth Week」に刺激的な人物が出席していた。

Growth Weekは開発経済学者と開発途上国の政策立案者を集めていて、私の注意はポール・ローマー、リカード・ハウスマン、ジョン・サットンに奪われていた。3人とも、経済学の改革者なのだ。

ローマーは内生的成長理論を生み出した―そしてマイケル・ヘーゼルタインにアイディアが「ブラウンのものではない―ボールズだ!」*3 と言ったことで印象深い。彼は学界の一線を退き、成功しているオンライン教育企業を設立し、今は現代版香港とも言える「自治都市」の創設を推進するために世界中を飛び回っている。彼については今後のコラムでもっと言及する。

Play-Dohとレゴについて訊ねたのは、かつてはベネズエラの大臣で今はハーバード大学の教授であるハウスマンだった。ハウスマンは、物理学者シーザー・ヒダルゴと共同で(彼らの業績については以前書いている*4 )、国内経済の複雑化とそれが作り出す生産物の種類の間の関係を解き明かそうとしている。

経済学者は経済をPlay-Dohのようなものとして見る傾向があった。生産物は、資本と労働と呼ばれる、数種類の未分化な「材料」の投入によって生産されている。もっと洗練された計算だと、土地、教育(「人的資本」)、制度(「社会資本」)も計算に入れるかもしれない。それでも、これらはたかだか5種類の材料に過ぎず、経済成長とはより多くの材料を集めてそれをより効率的に使うというだけのことだ。

ハウスマンは、これは洗練された生産物やサービスを生み出すのに必要な能力について考えるには役に立たない方法だと説得力たっぷりに論じている。例えばAmazonは、インターネットへの広範囲なアクセス、クレジットカード、物理的な住所、信用できる郵便局を必要とするサービスを提供している。ランの花のビジネスは、正しい種類の土地、水、電気と共に輸送するための適切な不文律が必要だ。いくつかの国ではインターネットショッピングが許可されているという前提条件が必要かもしれないし、他はランの生産のための肥沃な地域かもしれない。必要とされているものは「より多くの人的資本」では無く、むしろそれよりも明確で時には緻密な必要条件だ。それは違う形をしたレゴブロックであってPlay-Dohの塊ではない。

ハウスマンのレゴの比喩はおそらく楽観的すぎる。むしろ、これらのつかみどころのない経済的性質はおそらくコンピューターの部品(キーボード、マウス、スクリーン、インターネットへの接続、CPU)に近いものだろう。あなたは様々な方法でそれらを組み立てることができるが、数個の部品を取り外しただけで使い物にならなくなってしまうし、CPUなどのいくつかの部品は必要不可欠だ。ハウスマンは、国が能力の臨界点を持つに至るまで、より多くを得る必要がなくなる地点があるのではないかと心配している。ソフトウェアがなければキーボードをわざわざ手に入れる必要はない。

LSEのジョン・サットンは、企業がどうやってその能力を得ているのかということを解き明かそうとしている。彼の調査で、例えばエチオピアで主要な製造業の企業の多くが小規模製造業者としてではなく商業者として始まっている、ということが明らかになっている。彼らは50人の組織を動かすノウハウや市場についての本当の専門知識を持っている。ある不幸なマッチ箱の製造業者は輸送費を含めて5分の1の価格の中国からの輸入品によって競争に負けてしまった。あるしたたかな貿易業者は、中国のサプライチェーンを理解していてどうやって競争したらいいのか知っていたので、鉄線の製造に参入した。

サットンとハウスマンは全く異なる戦略を持っているが、共有している問いがある。「能力」が経済成長のレゴブロックだとしたら、それらはどこから湧き起こり、どうしたらもっと作ることができるのだろうか?

by Tim Harford

10月1日

(原文: Models for growth)


*1 アメリカ生まれの子供用造形粘土。
*2 London School of Economicsの略。ロンドン政治経済大学。
*3 1994年から1999年の間、エド・ボールズは経済学のアドバイザーとしてゴードン・ブラウンの下で働き、その間大臣のシャドウ・ライターとして「ポスト新古典派の内生的成長理論」というフレーズを使って大臣のスピーチを書いていた。これは保守党の高官であるマイケル・ヘーゼルタインを怒らせ、彼は「それはブラウンのものではない。ボールズだ。」と言い返した。
*4 Why getting complicated increases the wealth of nations

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