2010-12-14

[書評] その数学が戦略を決める


その数学が戦略を決める イアン・エアーズ著

本書は「ヤバい経済学」のスピンオフともいえる。ヤバい経済学が統計を使って「世の中」を描き出したのに対して、本書はその「統計(絶対計算)」に焦点を当てているからだ。

著者はまず身の回りで使われている絶対計算(Super Crunching)を紹介する。今年収穫されたブドウで作られるワインの品質を知る方程式、いくつかの情報を入力するだけで自分にぴったりの相手を紹介してくれる結婚情報サイト、もっとも安い運賃を提示してくれるサイト――。そのどれもがテラバイト級のデータを解析した結果に基づいているという。
次に、政府と医療現場での絶対計算の活用を紹介し、専門家と絶対計算のどちらが優れているか、絶対計算に対する専門家の抵抗を論じる。
そして、絶対計算を用いて消費者が不利益を被るケースがあるなど絶対計算には功罪両方があることを示す。
最後に絶対計算を使ってみるにはどうするかを書いている。

私が特に興味を惹かれたのは第5章だ。

第5章「専門家VS.絶対計算」では専門家と絶対計算を行うコンピューターが戦えば文句なしで後者が勝つと結論づけている。専門家がコンピューターの計算結果を考慮して判断を下すのではなく、専門家の意見を方程式に取り入れたコンピューターが決定するのだ、と。
では専門家の出番はどこにあるのか?
それは、直感で回帰分析で計算する変数を決めることだと著者は書く。

放射線医師のヤマ勘でしかなかったものが、結果として何十万人をも救うことになった。そう、演繹的な思考にもまだまだ大きな役割が残されているのだ。知に対するアリストテレス的なアプローチは今でも重要だ。物事の本質についてはまだ理論化が必要だし、推測も必要だ。だが昔は理論化それ自体が目的だったけれど、今やアリストテレス的なアプローチは、ますます出発時点の、統計試験の入力として使われるようになりつつある。理論や直感は、この世のフィンクたちにZを引き起こすのはXとYなのでは、と推測させてくれるかもしれない。だが(キャメロンたちによる)絶対計算が決定的な役割を果たし、その影響の有無と大きさを試験してパラメータ化するのだ。
理論の役割として特に重要なのは、可能性のある要因をとりのぞくことだ。理論や直感がなくては、どんな結果にもまさに文字通り無数の原因がありえる。 (P.214, 215)

ついでに、第8章「直感と専門性の未来」で紹介されている2SDルールとベイズ理論は役に立つこと請け合いだ。


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