2011-01-16

農業補助金によって安くなった野菜は消費者の利益になるのか


食料自給率が低いことは問題なのかへのコメントにこんなものがあった:

去年のタコもいい例ですがヨーロッパ圏で食べられるようになった事から大幅に値上がりしました。すぐ変動すると消費者にモロに当たります。
足りない時にどうしよう より最低でも準備をしておかないと間にあわないと思います。
輸入が減り国内需要が高まったとしても価格に影響が直に受けます。
農業だけ儲かっても会社の業績が落ち込んでしまいます。そして働いている人に影響が出るわけですからこれは雪だるま式になると思います。

では、外国からの輸入を制限して国内の農家に補助金を出したほうが、野菜は安くなり、消費者に優しくなるのだろうか?
例えば、今じゃがいもが1個50円だとする。これが何かの原因で70円になってしまった。これを知った消費者思いの官僚がじゃがいもの栽培に補助金を出して価格を30円まで下げようとした。
これは消費者にとってはありがたい話にも思える。これのどこがいけないのだろう?
問題は、農業への補助金は消費者の税金から出されている、ということにある。そして、これによって消費者の利益はプラスマイナスゼロどころかはっきりマイナスになるのだ。
ここにAさんとBさんとCさんの3人がいる。
Aさんはじゃがいも1個から80円、Bさんは60円、Cさんは40円の便益を得る。
じゃがいもの価格を市場に任せる世界では、Aさんは10円(80-70)の便益を得て、他の2人は得る便益よりも価格のほうが高いので買わないために得る便益は0円だ。
じゃがいもの栽培に補助金を出す世界だとどうなるか。3人には等しく40円(70円-30円)の税金がかかる。税金はじゃがいもを買うか否かに関わらず払わなければならないので、個々の「じゃがいもを買うかどうか」という意思決定には影響を及ぼさない。
次に3人がじゃがいもから得る便益を見てみよう。Aさんは50円(80円-30円)、Bさんは30円(60円-30円)、Cさんは10円(40円-30円)の便益を得る。
3人は70円のじゃがいもを買うよりも得をしただろうか?
3人は安くなったじゃがいもを買うことで合計90円(50円+30円+10円)の便益を得たが、補助金がなければ払わなくて済んだ税金120円(40円×3)が費用となるので、結局は30円の損となる。

以上を見ると、農家が農業補助金の撤廃に頑なに反対する理由も見えてくる。
農家が1個当たりのじゃがいもから得る収益は補助金の有無に関わらず70円だ。しかし、補助金がある(そしてその財源が税金という形で徴収される)ことによって、消費者のインセンティブが変わり、需要が増える。1個当たりの収益が変わらないのであれば多く売れたほうが農家の利益は増える。

現実には上記で行った計算よりも考慮すべき要因は多いが、こうして簡略化することによって多くのことが見えてくるのだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿